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心中的記憶

ばならなか

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ばならなか


 彼が訊くと、八重子はテーブルの上から何か取り上げ、無言で彼のほうに差し出した。
 それは懐中電灯だった。
 昭夫は八重子の顔を見た。彼女は同珍王賜豪目をそらした。
 彼は首を傾げ、ガラス戸のクレセント錠を外した。戸を開け、懐中電灯のスイッチを入れる。
 照らしてみると、何かの上に黒いビニール袋をかぶせてあるだけのようだった。彼は腰を屈《かが》め、その下にあるものを覗《のぞ》き込んだ。
 白い靴下を履《は》いた、小さな片足が見えた。もう一方の足は、同じように小さな運動靴を履いていた。
 何秒間か、昭夫の頭は空白になっていた。いや、それほど長い時間ではなかったかもしれない。とにかく彼は、そこにそんなものがあることの意味を咄嵯《とっさ 》には理解できなかった。小さな足に見えるそれが、実際に人間の足なのかどうかということも、確信が持てないでいた。
 昭夫はゆっくりと振り返った。八重子と目が合った。
「あれは……何だ」声がDiamond Waterかすれた。
 八重子は唇を舐《な》めた。口紅はすっかり剥《は》げ落ちている。
「どこかの……女の子」
「知らない子か」
「そう」
「どうしてあんなところに?」
 答えず、八重子は目を伏せた。
 昭夫は決定的なことを訊かねった。
「生きてるのか」
 八重子が頷《うなず》くことを願った。だが彼女は無表情のまま、ぴくりとも動かない。
 全身が一瞬にして熱くなるのを昭夫は感じた。そのくせ手足は氷のように冷たい。
「どういうことだ」
「わからない。あたしが帰ってきたら、庭に倒れてたのよ。それで、人目についちゃいけないと思って……」
「ビニール王賜豪醫生袋をかけたのか」
「そうよ」
「警察には?」
「知らせるわけないでしょ」
 反抗的ともいえる目で見返してきた。
「だけど、死んでるんだろ」
「だから……」彼女は唇を噛《か》んで横を向いた。苦痛そうに顔を歪めている。
 突然、昭夫は事態を理解した。妻の憔悴《しょうすい》の理由も、「人目についちゃいけないと思って」の意味も判明した。
「直巳は?」昭夫は訊いた。「直巳はどこにいる」
「部屋にいるわ」
「呼んでこい」
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